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無理なんか

Posted in Caligula-カリギュラ-, and テキスト

自宅主人公・神谷奏太。主人公×鍵介。

* * * * *

 唐突だった。
 ぺたり、と額に手を当てられる感触がして、僕は思わず目を見開く。
 「鍵介、具合悪いだろ」
 「え……」
 先輩が、僕の額に手を当て心配そうにこちらを見ていた。
 少し俯き加減になっていた僕に、わざわざ少しかがんで、顔を覗き込むようにして。
 「今日は部活、ここまでにしようか」
 そしてそんなことを言い出す。
 「なに言ってるんですか。今日、まだ一時間も探索してませんよ」
 ため息をつきながら、努めて呆れたようにそう言った。
 確かに体調は万全ではなかった。でも悟られないように気をつけていたつもりだし、自分のためだけに活動を中止させるのも嫌だった。
 「だって、鍵介はすぐそうやって無理するから」
 「……前にも言いましたが、無理なんてしてませんよ。無理しないのが主義なんで」
 そうだ。これくらい、無理するなんていううちには入らない。
 そう言ったら、先輩は何故か苦笑して踵を返してしまった。
 「おーい、みんな!ごめん、今日はこれで解散!用事思い出した!」
 ちょっと、と止める間もなかった。
 「先輩!」
 少し怒りを込めて呼び止め、先輩の肩を掴み、振り向かせる。肩から上だけで振り返った先輩は、やはり苦笑していた。
 「鍵介は嘘が下手だなあ」
 な、と言葉に詰まる。
 「でも、僕にはそれくらいの方がいいよ。すぐに気付いてあげられるから」
 無理しちゃダメだぞ、と、もう一度先輩は繰り返した。