自宅主人公・神谷奏太。主人公と笙悟。
妙に戦い慣れている奏太について。
* * * * *
「笙悟、デジヘッドと戦う時、もしかして頭狙ってる?」
帰宅部長、神谷奏太にそう尋ねられたのは、笙悟が彼に部長を譲ってそう経たない頃だった。
何回か連続してデジヘッドと戦闘になり、その直後というタイミングだった。
「別に意識はしてないが……まあ、言われてみればそうかもな」
正直、銃などという武器を持ったのはこのメビウスに来てからが初めてだ。カタルシスエフェクトは本物の武器ではないし、アリア曰く精神的な力なので、本物の武器を扱うための知識も必要ない。だからそもそも、「どうやって扱うか」「どこを狙うか」など、あまり意識をしていなかった。実際、意識しなくても思った通りに扱えるのだ。
意識はしていないが、「そうかもしれない」と思う根拠としては、普通FPSなどのゲームで銃が出てくる場合、ヘッドショットを狙うのが基本だから、というくらいだ。
奏太は指を顎に当て、「うーん」と考え込むような仕草をする。
「頭、狙えるならそれでいいんだけど。実戦だと、頭や手足はよく動いて狙いにくいから、なるべく胴体を狙った方がいい」
そして言われたのはそんなアドバイスだった。
「こっちが当てることよりは、向こうの武器に当たらないことを強く意識して、まず相手の機動力を削ぐ方がいい。機動力が落ちれば、いくらでも……追撃できるし」
……正直、ずいぶん的確で、ずいぶん物騒なアドバイスだと思った。
「追撃できる」と言葉を濁したその言葉の奥に隠れているのは、おそらく「とどめを刺せる」だ。
奏太は人当たりがよく正義感が強く、お人よしと言って差支えない少年だ。
しかし時々、こんな風に、普段の彼とかみ合わない彼が出てくる。そんな時、笙悟は本当に少しだけ、この男が怖いと思う。
「……詳しいな」
「まあね、これくらいは。秘密結社のエージェントだから」
にこり、と冗談かどうか分からない笑顔で返されて、もう何も言えなかった。