主人公×花村。
* * * * *
自分に覆いかぶさる彼の体温はずいぶん高い。
「なんで……おなじの、のんでるのに……おまえだけ……」
ずりーぞ、と舌ったらずな抗議が飛んでくるが、それさえも弱弱しくて迫力は皆無だ。悠は思わず苦笑する。
「わらうなっ」
どうやら酔っていても視界は良好のようだ。見とがめられて口だけ「ごめん」と返す。
どっちが強いか試してみよう。
そういいだしたのは陽介の方だ。外でやるのなら止めているところだが、幸いここは二人の自宅である。万が一何かあっても、迷惑がかかるのは自分たちだけだ。
そうして二人でビールだの何だのと買い込み、悠が腕を振るってつまみも用意した。
数時間後の光景がこれである。
「陽介、今日はもう寝よう?」
「………………風呂」
「だめ、危ないから」
ぐったりと自分に全体重を預けてくる陽介を支えながら、言い聞かせる。こんな状態で風呂になど入れたら、冗談ではなく溺れてしまう。
眠くなってきたのか、今度は抗議らしい抗議は返ってこない。むぅ、だの、くぅ、だの、言葉にならない声が肩越しに聞こえるばかりだ。
「俺も一緒に寝るから」
「………………ん」
肩に顎を乗せた状態で、陽介はようやく頷いた。よろしい、と声を掛けて、陽介を抱き上げる。
相変わらず軽い。女性を持ち上げるようにとはいかないが、それでもずいぶん軽いほうだ。普段ならこんなことをしたら「バカやめろ!」とわめくのが関の山だが、今日はおとなしいもので逆に首に手を回してくる。
「(普段からこう素直だといいのに)」
くすくすと含み笑いながら、寝室のドアを開ける。
ああでもそれもまずいか。自分以外にこんな姿を見せられたら、こちらがたまったものではない。