自宅主人公・神谷奏太。
主人公×鍵介。
三題噺。「カッター」「弱み」「指先」。
「そんな大げさな」
「大げさじゃない! ほら、指出して」
奏太は叱りつけるように言って、鍵介の手を取った。細長い指先からは、赤い雫が溢れ出している。先ほど、カッターで切ってしまったのだ。
「こういうのは意外と深いんだから」
奏太は慣れた手つきで傷を消毒し、絆創膏を貼ってくれる。
「先輩は心配性ですね」
カッターで手を切るなんて、子供みたいな失敗を見られたので少し気恥ずかしい――そんな本音を覆い隠すために、可愛くないことを言ってしまう。
しかし、それにしたって奏太が過保護なのには違いない。鍵介が「いたっ」と声を上げるなり、血相を変えて駆け寄ってくるのだから。
「心配性だよ。鍵介には特にね。鍵介が痛いのは僕だって痛い」
絆創膏を貼った指を、優しく奏太の手が包む。
思わず頬が熱くなった。そういう、歯の浮くようなセリフを、この人は恥ずかしげもなく言えるのだ。しかも素で。
優しくて強くてかっこいい。きっと何もなければ、羨ましくなってしまうほどの人。
「……そうですか。ありがとうございます」
でも、そんなあなたの失えば痛い弱みであることは、なんだか誇らしく嬉しいのだ。