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お前、消えるのか

Posted in Caligula-カリギュラ-, and テキスト

鍵主♀。エンディング後、同棲している設定です。
文字スケブにて書かせて頂きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰ると、透明な物体に出迎えられた。

 それは、靴箱の上に置かれた、見慣れないインテリアだった。透明な細長い容器に、そら豆くらいの大きさの、これまた透明な球体がいくつも入っている。差し込む光が複雑に屈折し、キラキラと瞬いていた。
 「……何これ?」
 「あっ、鍵介、おかえりなさい!」
 思わずそう口に出したところ、ちょうど白夜が居間から顔を出した。
 鍵介の顔を見るなり、ぱっと表情を輝かせる恋人に、思わず笑みが浮かぶ。
 「ただいま。……これどうしたんです?」
 小走りに、ぱたぱたと駆け寄って来た白夜にそう声をかけ、鍵介は改めてそう尋ねる。
 「これね、今日お買い物に行ったとき見つけたの。凄く綺麗で気に入っちゃって……その、お値段もそんなに高くなかったから、買っちゃった」
 尋ねられて、白夜はいつになくはしゃいだ様子でそう答えた。
 ……なるほど、言われてみると確かに白夜が好きそうなインテリアだ。
 白夜は昔からガラス細工やビー玉のような透明なものが好きで、今もコツコツ集めては、瓶などに入れて飾っている。これも、そんな彼女のお眼鏡に適ったのだろう。
 「あぁ、なるほど……でも眞白」
 気に入って買うのは問題ない。ないのだが。言いにくいことに。
 「これ……たぶん消臭剤ですよ。だんだん中身が減っていくタイプの」
 「えっ」
 多分気付いていないのだろうなあ、と思ってそう指摘すると、案の定、今の今まで上機嫌だった白夜が急停止した。
 白夜は、靴箱の上の「それ」を見つめ、それから悲しそうに眉尻を下げる。
 「……これ、なくなるの?」
 「はぁ。まぁ……そうですね……時間が経つと」
 そんな、と、白夜が悲しそうに呟いた。
 ……恋人が悲しそうなのはいただけない。いただけないが……さすがにそれを止める術は鍵介も知らない。

 ……近々、詰め替え用を買いに行こう。