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堕ちる君

Posted in Caligula-カリギュラ-, and テキスト

カギP×主人公。
主人公を洗脳するカギPの話。

 

 

 荒い吐息と、小さなうめき声ばかりが聞こえていた。
 椅子に座った彼を一瞥し、カギPはため息をつく。
 「案外強情なんですね、先輩って」
 センパイ、と年上を敬う呼称を使いながらも、その声色には全く敬意など含まれていない。
 椅子にぐったりと座らされ、ヘッドフォンのようなものをかぶせられて、呻いている少年――に近づいて、その顎に手をかける。
 「そういうの、無駄な抵抗って言うらしいですよ。早く楽になっちゃえばいいのに」
 「…………っ」
 無理矢理灰色の目をカギPの方に向けられた彼は、それでも懸命に目の前の敵を睨み付けた。

 こんなものになんか決して屈したりはしない。そういう目だ。目は口程に物を言うとはよく言ったもので、確かにその切れ長の目は、言葉よりはるかに雄弁に、カギPへの敵意を物語っていた。
 もう何時間もマインドホンを付けられっぱなしだというのに、何とも健気なことだ。こうしている間にも、彼の思考や精神は犯され続けているというのに。

 「でも、そういう先輩を見てるの嫌いじゃないんで、どうぞ好きなだけ頑張ってください」
 こうやって耐えていれば、いつかはカギPが諦めるだろう。そう彼が思っているのだとしたら、それは見当外れだ。
 そうやって健気に彼が耐えるほど、ぞくぞくと、快楽にも似た嗜虐心が育っていく。

 この目が自分に堕ちるそのさまを、必ず見届けてやる。